アムジスト雑記

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バイオハザード アーカイブ ウェスカーズエクストラレポート

ウェスカーズエクストラリポート

興味深い事件だ…

ロシア、コーカサス地方の寒村で猟奇殺人事件が連続発生している。村人は伝説の怪物「アルマス」が蘇ったのだと騒いでいるが…その惨状はラクーンフォレストでの最初の猟奇事件を簡単に連想させる。

その村の3キロ先にはソビエト時代に作られた古い化学工場があり、調査によれば、現在所有権はヨーロッパの名門貴族の元に移っている。

5年前には外資を投入して大規模な地下開発を行なったらしい。地質調査を見れば固い岩盤があり、ある種の施設を作るには申し分ない。

どうやらクロスワードが揃ったようだ。

ラクーン消滅から5年、アンブレラは図太く、生き延びてきた。ウィルス漏洩の責を問われ、株価暴落にも関わらず、すべてはアメリカ政府の陰謀であるという裁判とキャンペーンを展開、最終的な死刑宣告までの時間稼ぎに成功してきた。

元々政府と癒着してきたのがアンブレラにとっては幸いだった。当然国にも叩けば埃がでる機密があり、それを法廷とマスコミに切り売りすることで民衆の疑念を煙に巻く生き残り戦術だ。

人や組織や国家にさえ、多かれ少なかれ狂気というものが潜んでいる。しかし、あの事件で最も狂っていたのはアンブレラにほかならない。

愚かなアンブレラに再興の兆しが見える。紛争地でB.O.W.が跋扈し始めている。兵器としてB.O.W.が供給されているのだ。アンブレラは水面下で、体制を整え生物兵器を生産し、輸送する船舶が運航しているという情報も入ってきている。

潮時だ。t-ウィルスを捏ね繰り回し、変異体を作り、販売する。それに一定の成果が出ようとも、ウィルスを生体兵器の製造媒体にしか扱えない想像力ではいずれまたつまらないボロを出す。

"賢者の石"は真にふさわしい錬金術師の手へ。ふさわしくない者は、静粛に退場願おう。

ここが必ずアンブレラ終焉の地になる…
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バイオハザード アーカイブ エイダズリポート

エイダズリポート

CHAPTER1 END

成さねばならない真の目的。私はそれへの足がかりとして、今回の任務についた。すべてを終えるまで、誰にも真意を悟られてはいけない。そして、ただ隠れまわっているだけでもだめだ。時には彼らの前に姿を現し、道案内を施す必要がある。

まず、舞台背景について整理したい。教祖オズムンド・サドラー率いる教団ロス・イルミナドス、そして彼らが封印から解き放ったという寄生生物プラーガ。現段階で我々「組織」が把握している情報、サドラーの「秘術」について考察してみようと思う。

領主であるサラザール家が代々用いたとされる、プラーガを操る特殊能力。我々は、これは音響あるいは音波による特殊意思伝達法ではないか、との仮説を立てている。寄生体のみが感知できる音域で「命令」を伝え、意のままに操る。簡単に言えば犬笛の原理だ。

この説は、独自に入手した寄生体の肉片から、音を感知するらしき器官が確認されたことから推察されたものだ。かつて教団の教祖らは皆、特別な祭祀用の杖を携帯していた。これに何らかの仕掛けがあったのか、あるいは、特殊な音域を用いた発声法があるのか。あくまで憶測の域を出ない仮説のため、確証はまだない。

それら検証も含め、「プラーガのサンプル入手」は、今回の任務において何よりも優先する事項だ。それは「組織」に対して果たすべき私の信頼の証でもある。駒は動き出し、カウントダウンは始まった。もう後には引けない。

CHAPTER2 END

様々な思惑が交じり合う今回の事件において、彼…ルイス・セラの立場は比較的単純だ。背後に何らかの組織めいた動きは確認できず、あくまで彼個人の意思により行動しているものとみていいと思う。彼を今回の任務のキーパーソンとして「組織」に推したのは私だ。彼の人間性…経歴からにじみ出る「熱意」に、好感を抱いたからだ。

研究施設からの彼の救援要請メールを、偶然傍受できたのは幸運だった。どうやら彼は警察組織を信頼していないようで、メールは大学時代の友人宛に送られていた。彼自身はその友人がすでに死亡していたことを知らなかったようだけれど、ともあれその経路から彼との接触を図ることができた。

彼はプラーガの研究の合間に、教団の裏側についても独自の調査を進めていたようだ。その一部がメールにも書かれていたが、あらゆる面で真相に迫る鋭い考察を連ねている。この観察眼こそサドラーに買われた能力だろう。しかしその力は教団の深部に入り込み過ぎ、サドラーの疑念を抱くことになってしまった。

こちらの正体を告げると、彼は身柄の保護を願い出てきた。「自分は教団やプラーガになんら未練はない、ただ安全圏へ逃げ、平穏な生活に戻りたい」…と。我々は見返りに、証拠物のひとつである「支配種プラーガのサンプル」を持ち出して寄こすように命じた。

どうやら彼はサドラーの信頼を得ている数少ない人物のようでもある。接触を図って、サンプルを得ることは比較的容易だろうと目算した。だが、彼の逃亡は教団とて放ってはおかないだろう。手引きをし、ある程度こちらの意図通りに立ち回ってもらわなくては。

CHAPTER3 END

ジャック・クラウザー…この男については、「組織」も綿密な身辺調査を行ってはいた。作戦行動を共にするにあたり、彼の能力や性格に問題がないかをチェックした。中途半端なスキルでは、仲間をも危険にさらしてしまう。

結論を言えば、彼は優秀な傭兵で、それ以上でも以下でもない。十分な「報酬」を約束する限り、過不足ない働きをしてくれるはず。そして仮に不穏な動きを見せたところで彼の行動パターンはある程度読める。

今回の作戦行動は、すべてウェスカーが直々に指示を下している。クラウザーに教団にスパイとして潜入し「サンプル」の入手を命じたのも、私との共闘を決めたのもウェスカーだ。これは互いに監視せよとの意味合いなのだろう。

おそらくクラウザーは、すでに教団で「力」の象徴であるプラーガの魅力に触れ、陥落している。その結果、我々「組織」にとって害をなす存在となることも、遠からず予測できる。でも、これはある意味必然とも言うべき展開だ。彼には「舞台のかく乱」という本来の役割を演じてもらうしかない。

いずれ舞台そのものも、破壊され抹消される運命にあるのだから…。彼にとっては不幸だけれど、目的を達成するための隠れミノとして、しばらくは今の立ち位置を保持してもらいたいものだ。

CHAPTER4 END

レオン・S・ケネディ。彼の存在は、今回の任務を完遂するために欠かせないパーツだ。何よりも、彼の持つ圧倒的なサバイバル能力がなければ、この物語は完成しない。人外の化け物がうごめく地獄で、たった一人の力のみで生存し続けるという難題を、彼は過去に成し遂げている。それも、訓練もままならなぬ新米警官の時代に。

常人離れの強運と、それをとっさの判断で最大限に生かす非凡なセンス。まさに天賦の才能だと思う。政府直属のエージェントとしての経験は、そこにタフさとしたたかさも加えた。彼には「主役」として、物語の裏側を引っ張っていってもらう必要があるけれど、それはさほど難しいことではないと楽観もしている。

もちろん、サドラーやクラウザーが関わる以上、不測の事態もある程度は考慮しておかなくてはならない。だけど、あくまで私は己の目的のために彼を「サポートする役」に徹する。彼を主役の座から降ろさせないためのサービスも、幾度かは施すつもりだ。

それにしても…ほんの数ヶ月前までは、この「配役」は想像し得なかった。私の役どころももう少し単純なものだったはず。大統領の娘の誘拐、その専属捜査エージェントとしての単独派遣。物語の骨格は、レオン介入の事実が判明した時点で修正され、今の形に整えられた。

でも、私は必要以上の不安は抱いていない。レオンの通る道に、困難はあれど挫折はないと確信できるからだ。どんな理不尽な運命にも、彼は抗ってきた。その強運が、私を勇気付ける。私だけが、未来の明確なヴィジョンを見通せている。その自信に、少しも揺らぎはない。

CHAPTER5 END

小さなほころびは、なんとか取り繕うことができた。任務は成功、と言えると思う。サンプル入手という当初の目的も無事に果たせた。ウェスカーには別のプレゼントを贈った。「組織」の命令だからだ。彼との偽りの共謀も、なかなかスリリングではあった。

アルバート・ウェスカー…彼はどこに向かおうとしているのだろう。今回の任務を通じ、ほんのわずかその一端に触れた気がした。私にとってアンブレラとは、かつては力の象徴、己の野望を実現させる強力な後ろ盾だった。しかし「傘」は破れ、幻想は砕かれた。

庇護を失った黒い企みの主たちは散り散りになり、今また、新たな「傘」を求めてうごめいている。彼らは陽の光を嫌う。自分自身の醜さを誰より自覚しているから。ウェスカーは、より大きく丈夫な新しい「傘」をかかげるつもりなのだ。

世界各国の公共医療機関にも薬剤を提供している巨大製薬企業「S」。ウェスカーがアンブレラ崩壊後に接触した形跡が確認されている。彼の次の「起点」は、おそらくそこだろう。「組織」ともども、注意深く見守る必要がある。

しかし、ウェスカーとて馬鹿じゃない。私や「組織」の思惑を、少なからず理解しているはず。私も彼も、互いに泳がし、泳がされている。それを愉しむ余裕が、今はまだある。真の目的への一歩は、無事に踏み出した。確実に言えることはひとつ…戦いはまだ終わらない。
 
 

バイオハザード アーカイブ ウェスカーズリポート1

ウェスカーズリポート1

私の名前はアルバート・ウェスカー。製薬会社アンブレラの研究員を目指していた私は、アメリカ中西部の地方都市ラクーンシティにある幹部養成所に籍を置いていたが、そこで同僚のウィリアム・バーキンと出会い、その突出した才能の前に別の道を歩むことを決めた。

やがて彼はアンブレラの中枢を担う科学者になり、Gウィルスをさらに発展させたGウィルスの研究を任され、私はアンブレラがラクーンシティのご機嫌取りの為に創設した特殊部隊S.T.A.R.S.の隊長を装いながら様々な諜報活動を行なっていた。

アンブレラの総帥であるオズウェル・E・スペンサー卿と密約を交わし、バーキンと共に当時の養成所所長だった恩師マーカス博士を裏切った見返りがこんなものとは。スペンサーは私の実力を見くびっている。

だが天罰は下った。ラクーンシティ郊外にある洋館であの事件が起き、アンブレラはその隠蔽工作に奔走するようになったのだ。その事件とは…

洋館付近の森で次々に猟奇殺人事件が発生。原因は洋館内にあるアンブレラの研究所でTウィルスが漏れ、バイオハザードを引き起こしたことにあった。

当初、アンブレラは私にS.T.A.R.S.をこの事件に介入させないように秘密理に指令して来たが、結局市民感情が高まり、出動せざるを得なくなった。

それを知ったアンブレラは危機を感じた。事件が白日のもとにさらされるのを恐れたのだ。そこで、『S.T.A.R.S.を洋館におびき寄せ抹殺しろ。そしてその状況をつぶさに本部を報告し、戦闘時におけるB.O.W.の実戦データとして役立てよ』との指令を私に下してきたのだ。

そこで私は、まずブラヴォーチームをSポイントに派遣した。さすがS.T.A.R.S.の精鋭達だけあって、彼らは自分たちの命を省みず、果敢に敵と戦い、実戦データ採取に役立ってくれた。

続いて私は、戻らぬブラヴォーチーム捜索の為アルファチームを出動させた。アルファチームの連中も勇敢に戦い次々に死んで行った。そして最後に生き残ったのは、アルファチームのクリス、バリー、ジルとブラヴォーチームのレベッカ、エンリコの5人だった。

今回の事件は私にとって千載一遇のチャンスだ。事件の混乱に紛れて、タイラントを奪い以前から誘いがあったアンブレラの対立企業に移る手土産とすればいい。だが対立企業に売り込むには、タイラントの実戦データも必要だ。生き残った5人は高い能力を持ち、タイラントにぶつけるに、うってつけの存在だった。実戦データの採取とS.T.A.R.S.の抹殺、まさに一石二鳥というわけだ。

そこで私はアルファチームにユダ(裏切り者)を忍ばせ、タイラントまで誘導させて実戦データを採取することにした。ユダ(裏切り者)…その正体はバリーだ。奴は正義感が強く、人一倍情に厚い男で家族を大事にしていた。このタイプを操るのはたやすい。そいつが大事に守っているものを奪ってしまえばいいのだから。クリスやジルが予想以上のポテンシャルを秘めていたのは誤算だったが、バリーの裏切りで計画は順調に進んだ。

だが思わぬところで計画が狂った。S.T.A.R.S.副隊長兼ブラヴォーチーム隊長エンリコ。その腕もさる事ながら、鋭い観察力と正義感の強さで人望を集めていた奴に、バリーとの会話を聞かれてしまったのだ。真相に気づいたエンリコを始末しなければならない。私はバリーを使い、奴を追い詰めた。だが後少しのところで邪魔が入ったのだ。

首尾よく邪魔者を始末した私はタイラントのいる部屋で、バリーが連れて来る筈の実験体の到着を待っていた。私はバーキンからもらったウィルスを事前に注入し、クリスが見ている前で、タイラントの封印を解き放ち、私自身を襲わせ、死んだと見せかけた。

対立企業に身売りするには、死んだと思わせたほうが都合が良かったからだ。バーキンの話では、このウィルスの効果は絶大で、一度仮死状態になった後、超人的な能力を身につけて蘇るというのだ。タイラントに倒され、薄れゆく意識の中で、私は計画の成功を確信していた。

だがまさかS.T.A.R.S.の手でタイラントが倒されようとは。私は最大の手土産を失い、人間を捨ててまで立てた計画を台無しにされたのだ。私の邪魔をする者は、例えどんな手を使っても葬り去る。今までそうやって生きてきた。それはこれからも変わることはないだろう。必ずやS.T.A.R.S.を追い詰め皆殺しにしてやる!

洋館事件から2ヶ月がたった。私は加入した新しい組織で、地に落ちた評価を取り戻すために、同じ組織からアンブレラに送り込まれていたエイダという女スパイと手を組む事にした。彼女からの情報によると、アンブレラでは新たなGウィルスが完成間近だが、開発した研究者がアンブレラに渡すのを拒んでいるというのだ。

私は直感的に開発したのは、ウィリアム・バーキンだと確信した。バーキンも無茶なことをする。アンブレラの恐ろしさを知らないのだ。恐らくこのままではバーキンは殺され、Gウィルスはアンブレラに回収されてしまうだろう。バーキンには借りもある。奴を助けgウィルスを手土産に、こちらの組織に引き込めばいい。

だが私の計画より先にハンク率いるアンブレラの回収部隊が動き出し、Gウィルスを奪取しようとして、追い詰められたバーキンは自らGウィルスを注入してモンスター化し、回収部隊を全滅させてしまった。

それから間もなくネズミを媒介にしたTウィルスの蔓延がラクーンシティを襲い、アンブレラは最悪のシナリオを迎えた。アンブレラはアメリカ政府と協力し、事件の隠蔽に血眼になっている。それはアンブレラヨーロッパが開発したネメシスという新型のB.O.W.をラクーンシティに投入した事からも明らかだ。

我が組織もネメシスのデータ収集に乗り出さねばなるまい。

新事実が判明した。バーキンは昔から研究結果を娘のシェリーが持つペンダントに隠していたと言うのだ。Gウィルスも彼女のペンダントの中に違いない。ラクーンシティの混乱に乗じてアンブレラよりも先にシェリーを確保するのだ。私はエイダを潜入させ、シェリーの居場所を探らせた。死人である私はあくまで影で動かなければならない。

スパイというのは、感情を持たず、任務を忠実に遂行するマシンの筈だ。ところがレオンと行動を共にしるようになってからのエイダの中につまらぬ感情が芽生えつつあった。悪い予感がする。急がねばなるまい。

予感は的中した。エイダは、シェリーからペンダントを受け取ったレオンを追い詰めておきながら、つまらぬ感情に流され自ら死を選んだ。しかし彼女にはまだやってもらわねばならない事がある。ここは命を助けねばなるまい。

私達はレオンが投げ捨てたペンダントの回収にあたったが、アンブレラ回収部隊唯一の生き残りであるハンクがいち早くペンダントを回収してしまった。止むを得まい。残された手は、モンスター化したバーキンを実験体として持ち帰る。その際、レオンやクレアをバーキンにぶつけ、実戦データを取ることも忘れてはいけない。

結局バーキンはレオンとクレアの前に敗れ去ってしまったが、我々は残された遺体からGウィルスを回収するのに成功した。ウィルスの感染を防ぐ為と偽り、アメリカ政府によってラクーンシティが爆撃されたのは、その翌日の事だった。

その後クレアは兄クリスを探すために単身ヨーロッパに渡り、レオンは反アンブレラを掲げる地下組織に入りバリーと共に戦っている。そしてシェリーは今我々の手にある。バーキンの事だ、まだ何かをこの娘に隠しているに違いない。
 
 

バイオハザード アーカイブ ウェスカーズリポート2 「女の実験体」

1978.7.31(mon)

「女の実験体」

そこを初めて訪れたのは、18歳の夏だった。今から20年前の話だ。降り立った時の、ヘリコプターのローターで掻き回された風の臭いは今でも憶えている。上空からは何の変哲もなく見えた洋館も、地上では近寄りがたい何かがあった。私より2つ年下だったバーキンはいつもと変わらず、手にした研究書類にしか興味はない様子だったが…。

私達2人がそこへの就任を告げられたのは、その2日前、所属する幹部養成所の閉鎖が決まった日の事だった。全ては計画されていたようにも思えたし、単なる偶然とも考えられた。真相を知るものは、多分、スペンサーだけだろう。そのスペンサーが、当時アメリカでの「t-ウィルス」の開発の拠点としていたのがそこ、アークレイ研究所だった。

ヘリコプターから降りるとすぐに、その施設を管理する「所長」がエレベーターの前に立っていた。「そいつ」の事は名前すら憶えていない。形式上はどうあれ、アークレイ研究所は、その日から私とバーキンのものだった。私達は主任研究員として、そこでの研究の全権を任されたのだ。もちろん、それはスペンサーの意志だ。私達は選ばれたのだ。

私達は「所長」を無視してエレベーターに乗り込んだ。私はその施設の構造を、前日に全て暗記していたし、バーキンは悪気などなく、他人の事は目に入らない。2人を相手にした人間は、最初の5秒で憤慨するのが普通だ。

しかし、「所長」には何の反応もなかった。当時の私は慢心した若造だったので、その「所長」の様子を気にも留めずにいた。結局、そこにいた頃の私はスペンサーの手の上で踊っていたに過ぎず、「所長」はそんな私よりも自分達のボスであるスペンサーの考えを理解していた訳だ。

3人を乗せたエレベーターが地下へと降りる間も、バーキンは手にした書類から目を離すことはなかった。その時、バーキンが目を通していたのは、2年前アフリカで出現したフィロウィルスの新種「エボラ」の記録だった。今この瞬間も、「エボラ」を研究している人間は世界中に大勢いるはずだ。だが、その目的は2通りに分かれる。人を助けるためと、人を殺すために。

知ってのとおり、「エボラ」が感染した場合の死亡率は90%。10日で人体組織を破壊する即効性を持ち、今現在も予防法も治療法も確立されていない。兵器として使用されれば、恐るべき威力を発揮する可能性がある。

もちろん、それ以前から既に「生物兵器禁止条約」が発効されているため、我々がそれを兵器として研究することは違法だ。しかし、我々ではなくとも、どこかの誰かがそれを兵器として使用しないという保証はない。そういった場合のために、予め研究しておくことは合法である。そして、その境界線は極めてあいまいだ。

なぜなら、使用された時の防衛策の研究には、どう使用されるかも研究する必要がある。治療法の研究と、兵器の研究には、内容に何ら違いは無い。それはつまり、治療法の研究と偽って、兵器を研究する事も可能という事だ。

しかし、この時のバーキンはどちらの理由にせよ、「エボラ」そのものを研究するつもりでその記録を見ている訳ではなかった。そのウィルスには余りにも欠点が多過ぎたのだ。

まず第1に、生体外では数日しか生きられず、太陽光(紫外線)で簡単に死滅する。第2に宿主となる生体(人間)をあまりにも早く殺してしまうので、次の宿主に移るまでの猶予がほとんど無い。第3に宿主から宿主への感染には直接的な接触が必要で、比較的簡単に防護できる。

だが例えば、次の事を考えてみてほしい。

もし「エボラ」を発病した人間が、体内にウィルスが溢れたその状態で立って歩けたとしたら?そして、意識の薄れた状態でありながら、感染していない人間へと自分から接触していくとしたら?

もし「エボラ」の遺伝子であるRNAが人間の遺伝子に影響を与えるとしたら?そして、それによって簡単には死なない怪物のような耐久力が人体に授かるとしたら?

それは人としては死んだ状態でありながら体内のウィルスを他の生体へと拡散させる「生体生物兵器」となり得るのではないだろうか?

「エボラ」がそのような特性を持っていなかった事は幸いだった。これからも我々だけがその特性を持ったウィルスを独占し続ける事ができるのだから。

スペンサーを中心として設立されたアンブレラは、まさに、その特性をもったウィルスを開発するための組織だった。表向きはウィルス治療の製薬会社だが、実体は「生体生物兵器」の製造工場だ。生体の遺伝子を組み替える、「始祖ウィルス」の発見が事の発端らしい。

「始祖ウィルス」から「生体生物兵器」を製造するために、その特性を強化した「ウィルスの変異株」を開発する。それが「t-ウィルス」計画だ。

RNAウィルスである「始祖ウィルス」は突然変異を起こし易く、それによって特性を強化する事ができる。バーキンが「エボラ」に興味を持ったのは、その遺伝子を「始祖ウィルス」に組み込む事での特性強化だ。「エボラ」のサンプルは、この時既に、この研究所にも届いていたのだ。

私達は、何度かエレベーターを乗り換え、施設の最高レベルに到着した。そこではバーキンですら顔を上げた。私達はそこで初めて、「彼女」と出会ったのだ。

「彼女」については事前に何も知らされていなかった。この研究所の最高機密であり、そのデータは一切外には出されなかったのだ。記録によると、この研究所が創設された時からここにいる事になる。

「彼女」はこの時25歳。だが、名前も、何故ここにいるのかも判らない。「彼女」は「t-ウィルス」開発のための実験体だった。実験開始日は、1967年11月10日。「彼女」は11年もの間、ここでウィルスの投与実験を受けていたのだ。

バーキンが何かをつぶやいた。それは呪いの言葉だったのか、それとも賞賛の言葉だったのか。私達は既に、後戻りできない場所まで来てしまったのだ。研究を成功へと導くのか、それとも、「彼女」のように朽ち果てるのか。もちろん、選択肢は1つしかなかった。

パイプベッドに拘束された「彼女」の姿は、私達の意識の中の何かを動かしたのだ。これもスペンサーの計画した事の一部なのだろうか?

(記録は3年後へと続く)
 
 

バイオハザード アーカイブ ウェスカーズリポート2 「アレクシア-1」

1981.7.27(mon)

「アレクシア-1」

(前回の記録内容から3年後)

この日、アンブレラの「南極研究所」に、10歳の少女が主任研究員として配属された。名前は「アレクシア・アシュフォード」。私が21歳、バーキンが19歳の時だ。

忌々しい事に、私達のアークレイ研究所でも、「南極でのアレクシア」の噂は研究員達の話題を独占した。古くからアンブレラにいた年寄り連中にとって、「アシュフォード家」の名前は伝説だったからだ。

以前から、研究が行き詰まると無能な老人達は決まってこう言った。『「エドワード博士」が、生きて居られれば。』確かに「エドワード・アシュフォード」は「始祖ウィルス」発見者の1人であり、「t-ウィルス」計画の基盤を創った偉大な科学者だったかもしれない。

しかしアンブレラが創設されて間もなく彼は死んだのだ。その死から既に13年が過ぎていた。

今更「アシュフォード家」に期待して何になる?事実、「エドワード」の死後13年間、その息子の設立した「南極研究所」は何の成果も上げてはいなかった。孫である「アレクシア」の頭脳も高が知れているではないか!

ところが、この日を境に、私達の部下である死に損ないのクズ共がこう言い始めた。『「アレクシア」様が、ここに居られれば。』名家だの血筋だのでしか人間を判断できない、愚民共が部下では先が思いやられた。

奴等は、そういう考えだから、棺桶に片足を突っ込んだ年齢になっても誰かの指示がないと動けない下っ端なのだ!…しかし、私にはまだ分別があった。

主任である私が、その時、熱くなっていたなら、アークレイ研究所での「t-ウィルス」開発はもっと遅れていた事だろう。いかなる状況でも、冷静に判断できねば成功は有り得ない。

その時、私は次のように考えた。古い時代の御歴々を上手く扱ってこそ研究成果も上げられる。いつ死んでもおかしくない御老体ならば危険な実験にも相応しい、と。全ての人材を合理的に利用できねば人の上には立てまい?

だが、問題はバーキンだ。「アレクシア」の噂に対する彼の反応は悲惨なものだった。口にこそ出さなかったが、バーキンにとって、それ以前では最年少の16歳で主任になった事は自慢だったはずだ。

そのプライドが「10歳の少女」によって粉々に砕かれたのだ。天才として生まれて、初めて味わう敗北感だったのだろう。「年下」の、「名家」の、「女」を、彼は容認できなかったのだ。

まだ何の研究成果も上がっていない遠い地での人事に翻弄されるとは。つまるところ彼はまだ子供だったのだ。しかし精神的に未熟であるにせよ、バーキンには何としても立ち直ってもらう必要があった。

私達の研究は、この3年間で第2段階まで入っていたのだ。この時点での「t-ウィルス」は、通称「ゾンビ」と言われた「生体生物兵器」の製造には、安定してきた。

ただ、ウィルスによる遺伝子への影響に、100%という事は有り得ない。人によって遺伝子には微妙な違いがあり、相性というものがあるためだ。「ゾンビ」から感染しても、1割ほどの人間は発症を免れる。こればかりは遺伝子研究を続けてもどうにもならない。

9割の人間を発症させられるなら兵器としては十分なはずだったが、スペンサーの考えは違ったようだ。私達のボスは「それだけ」で100%の人間を殲滅できる、独立した兵器を望んでいた。だが、一体何のために?

もともと生物兵器の取り柄は安価に開発できる事だった。ところが我々が研究する「生体生物兵器」は、極めて高価なものになり始めた。スペンサーも普通に金儲けがしたいだけなら、こんな道は選ぶまい。

通常の兵器システムとの併用ならば十分採算が取れるはずだった。だが「独立した殲滅兵器」として研究を続けるのは割に合わない。なぜ採算を度外視してまでこの研究を続けるのだろうか?

戦争の概念を変える事で、「全軍需産業の独占」でも狙っているのなら理解もできるが…。

スペンサーの真意は今でも判らない。

スペンサーの真の目的は別として、この時バーキンが考案していたのは戦闘能力を重視した「生体生物兵器」だった。「t-ウィルス」の遺伝子操作だけでなく、他の生物の遺伝子情報をも組み込む事で、「そいつ」を創り出そうというのだ。

武装、又は対ウィルス装備をした人間や、感染発症を免れた人間をも殲滅する、「戦闘用の生体生物兵器」、それは後に「ハンター」と呼ばれる事になる。

だが、その実験はしばらく中断せざるを得なかった。バーキンから実験体を守るためだ。「アレクシア」に対して無意味な焦りを持ったバーキンは、常軌を逸した行動をとるようになっていた。

彼は24時間、研究所に泊り込み、無計画な思い付きで実験を繰り返した。私は他の研究員も使って、実験体が死ぬ前にできるだけ多くの生体サンプルを抽出したが、彼のスピードには追いつかなかった。

「所長」は何事も無かったかのように、新しい実験体を補充し、それもあっという間に死んでいく。そこは地獄だった。だが、その地獄の中で唯1人、あの「女の実験体」だけは生き延びていた。「彼女」は既に28歳。もう14年をこの研究所で過ごした訳だ。

14年前の「始祖ウィルス」投与によって人間としての思考能力は無いはずだが、もしも心が残っているのなら「死」こそ「彼女」の望む結末だろう。だが、「彼女」は生き続けた。

なぜ「彼女」だけがこれほど生き続けられるのか?実験データは他の実験体と何ら変わらないというのに。その謎が解けるまでにはまだ多くの時間が必要だった。

(記録は2年後へと続く)
 
 

バイオハザード アーカイブ ウェスカーズリポート2 「アレクシア-2」

1983.12.31(sat)

「アレクシア-2」

(前回の記録内容から2年後)

「アークレイ研究所」で迎えた6度目の冬。この2年間はろくな研究成果も上げられず停滞した時間が過ぎ去っていったが、そこにようやく転機が訪れた。きっかけは、この日の朝に受けた1つの報告からだった。

南極の「アレクシア」が死んだのだ。死因は「アレクシア」自身が開発した「t-ベロニカ-ウィルス」の、感染事故だった。この時「アレクシア」は12歳。危険な研究を続けるには余りにも若すぎたようだ。

噂の中には「アレクシア」は当初から計画して自分自身に「t-ベロニカ」を投与した、という話もあったが、いくら何でもそんな事はあるまい。たぶん、1年前の父親の失踪の悲しみから立ち直れず、ミスを犯したのだろう。

その後「南極研究所」では、残された唯一の正当な血縁者である「アレクシアの双子の兄」が研究を引き継いだが、「この男」には誰も期待はしていなかった。結局「アシュフォード家」は何の研究結果も出せないまま、滅びたも同然だった。私の予想通り、所詮伝説は伝説に過ぎなかったのだ。

「アレクシア」の死によってバーキンは変わった。いや、元に戻ったと言うべきか。だが、何よりも部下である研究員達が彼を認めざるを得なくなった事は大きい。今となっては、彼を越える人間はいないのだ。

ただ、それでも彼の前で「アレクシア」の話をするのはタブーだった。私が「t-ベロニカ」のサンプルを手に入れようと画策した時も、彼は猛反対したものだ。「アレクシアの研究」の真相を掴むのは、しばらく後回しにするしかなかった。

結局、取り巻く状況は好転したものの、バーキン自身は何の成長もしなかった訳だ。しかしその頃の私は、そんな事よりももっと大きな疑問を抱えていた。

私達の「アークレイ研究所」は深い森に囲まれている。私はよくその中を散策したが、山岳地帯の中心部に位置する「この研究所」の近くでは人と出会う事は全くなかった。そこへの交通手段はヘリコプターしかなく、人が訪れるような場所ではなかったのだ。

周りに人がいないという要素は、万が一ウィルスが流出した場合での被害を最小限に食い止める上で、もちろん重要な事だ。だが「生物兵器」はそれほど単純なものではなかった。「ウィルス」は人だけに感染するものではないのだ。

どんなウィルスも、1つの種だけを宿主とする訳ではない。例えば「インフルエンザ・ウィルス」は確認されているだけでも、人間以外に鳥やブタ、馬、アザラシまでも宿主とする。ここで複雑なのは、その種の中の全てが宿主となる訳ではなく、鳥の中でもカモやニワトリは宿主となるが別の鳥はならなかったりする事だ。

しかも「同じウィルス」でも、「その変異株」によって更に宿主は変わる。「1つのウィルス」だけを対象としても宿主となる生体を全て把握する事は不可能なのだ。そして問題は、「t-ウィルス」が持つ種を越えた適応性の高さにある。

バーキンが使い物にならなかった頃 私は「t-ウィルス」の二次感染性を調べていた。そこで判った事は、「t-ウィルス」はほとんどあらゆる種の中に宿主となる生体がいる、という事実だ。動物だけでなく、植物、虫、魚など、ほとんどの種が「t-ウィルス」を増幅拡散させ得る可能性を持っている。

「研究所」を出て森の中を歩く時、私はいつも考えた。スペンサーはなぜ、ここを選んだのか?

森の中にはあらゆる生態系が集まっている。もしここで「ウィルス」の流出があり、宿主として合致する生体がいた場合、どうなるのだろうか?

それが昆虫だった場合、元が小型なので単純な二次感染だけならば大きな脅威にならないと感じるかもしれない。だが昆虫は生物的に、爆発的な大量発生をする可能性がある。その場合「ウィルス」はどこまで広がるのだろうか?

それが植物だった場合、自分からは移動しないので汚染の可能性は少ないように思えるかもしれない。だが、その植物の出す花粉はどうなる?

この場所は、あまりにも危険だった。

考えてみれば、「アシュフォード家」が研究所の設立場所を「南極」にしたのは至極当然の事だ。それとは逆に、ここはまるでウィルスを拡散させる目的で選んだ拠点のようではないか。だが、まさか、そんな事はあるのだろうか?スペンサーは私達に何をさせようとしているのだろうか?

この問題は余りにも大きく、他の研究員達には漏らせなかった。この時私が相談できそうな相手はバーキンくらいだったが、彼に話しても意味のない事は明白だった。

必要なのは情報だ。この頃から私は、研究員としての自分の立場に限界を感じ始めていた。

スペンサーの真の目的を探るためには、もっとあらゆる情報に近いポジションに就く必要がある。そのためになら、それまでの地位を捨てる事にも未練はなかった。

だが、急いではいけない。スペンサーに感付かれては、全てが終わってしまう。私は自分の考えを誰にも悟られぬよう、バーキンと共に研究に没頭した。

そんな中、あの「女の実験体」は研究所の片隅で忘れられていった。生き続けるだけの「デキソコナイ」。意味のある実験データが採れない事から、いつしか「彼女」はそう呼ばれるようになっていた。

5年後の、あの実験の時までは…。

(記録は5年後へと続く)
 
 

バイオハザード アーカイブ ウェスカーズリポート2 「ネメシス」

1988.7.1(fri)

「ネメシス」

(前回の記録内容から5年後)

私達にとって、「アークレイ研究所」での11年目の夏が始まろうとしていた。

その頃は私も既に28歳。バーキンに至っては2歳になる娘の父親にもなっていた。相手も「アークレイ」の研究員だ。互いにそこでの研究を続けながら、結婚し子供まで育てる気になれた事は普通に考えれば理解し難い。

だが、まともな神経の人間ではないからこそ「アークレイ」での研究を続けられたとも言える。そこで成功する者は、狂った人間だけだ。

そして10年という歳月の中で、私達の研究は遂に第3段階に入っていた。知能を持ちプログラムされた命令を遵守し、兵士として行動するより高度な「戦闘用の生体生物兵器」。通称「タイラント」と呼ばれたモンスターを創り出す事が、それだ。

しかし、その研究には当初から大きな障害があった。「タイラント」の基となる、「生体」の入手が困難だったのだ。遺伝子的に「タイラント」として適応する「人間」が、当時は極めて限られた事が最大の問題だった。

それは「t-ウィルス」の性質が原因だった。「ゾンビ」や「ハンター」を製造する為の「t-ウィルス変異株」はほとんどの「人間」に適応したのだが、脳組織を衰退させる問題があった。ある程度の知能が維持できねば、「タイラント」には成り得ない。

バーキンはその問題を克服するべく、完全適応すれば脳への影響を最低限に抑える新しい「変異株」の抽出を行なった。だが「その変異株」に対しては「適応する遺伝子を持った人間」が極めて少なかった。遺伝子解析班のシミュレートでは、「1000万人に1人の人間」しか「タイラント」として発症せず、他はただ「ゾンビ」となるだけだったのだ。

研究が進めばもっと多くの「人間」が「タイラント」として発症する別のタイプの「t-ウィルス」も開発できるはずだった。しかし、その研究をする為にも先ず「新しい変異株」に完全適応する「人間」が必要とされた。

とは言え、アメリカ全土を探しても数十人しか存在しないような「人間」が、「実験体」として連れて来られる可能性は極めて低い。実際その時は、他の研究所からも無理矢理集めた上で近い遺伝子のものが僅か数体用意できただけだった。私達は研究を始める前から暗礁に乗り上げていたのだ。

ところがそんな時、ヨーロッパの「ある研究所」では全く新しい発想で「第3段階の生体生物兵器」を製造する計画があるという噂を耳にした。それが「ネメシス計画」だ。

私はその時の状況を変えるためにも「その計画」の「サンプル」を入手するべく行動した。もちろんバーキンは反対したが、この時は何とか彼を説得できた。「適応する生体」が見つかるまで私達の研究が進展しない事は彼も認めざるを得なかったのだ。

ヨーロッパからの「荷物」がいくつかの中継を経て届けられたのは、それから数日が過ぎた深夜の事だった。ヘリポートに降ろされた「それ」はほんの小さな箱に入っていた。

「ネメシス・プロトタイプ」。「フランスの研究所」で開発中だった「それ」を手に入れる為にはかなり強引な手段も使ったが、結局はスペンサーの後ろ盾が大きかった。バーキンだけは最後まで「それ」に興味を示す事は無かったが、それでも実験する事の意義は認めてくれた。

「そのサンプル」は全く新しい、画期的な構想のために開発されたのだ。遺伝子操作によって人工的に創られた「寄生生体」。それが「ネメシス」の正体だった。

「知能」だけを特化させた「生体」で単体では何もできない。しかし、「他の生体の脳」に「寄生」する事によって「知能を支配」し、高度な戦闘能力を発揮することができる。「知能」を「戦闘用の生体」とは別に用意し、その2つを複合する事によって1つの「生体生物兵器」を構成しようというのだ。確かにこれが完成すれば、「知能」の問題を気にする事なく「戦闘用の生体」を創る事ができる。

だが問題は、「それ」による「寄生」が全く安定していない事だった。「サンプル」に添付された書類にも、失敗による「生体」の死亡例だけが羅列されていた。「ネメシス」の「知能支配」から5分と持たずに、「寄生された生体」が死亡してしまうのだ。

しかし、未完成の「プロトタイプ」が危険な事は承知の上だった。何とか「寄生時間」を延ばす事だけでも成功すれば、「ネメシス計画」の主導権はこちらが握れる。それが私の狙いだった。

もちろん、あの「女の実験体」を使うのだ。「彼女」の異常な生命力ならば、「ネメシス・プロトタイプ」の「寄生」にも長い間耐えられるだろう。たとえ失敗しても、こちらは何も失わない。

ところがその実験は、私の予想に反して全く別の結果を引き起こした。「彼女」の脳に侵入しようとした「ネメシス」が、消えてしまったのだ。

最初は何が起こったのかすら判らなかった。まさか「彼女」の方が「寄生生物」を取り込んでしまうとは思ってもみなかったのだ。それが始まりだった。

それまではただ死なないというだけの存在だった「彼女」の中で、何かが覚醒しようとしていた。私達は「彼女」をもう1度、最初から調べ直さねばならなかった。

それまでに10年間で「彼女」の事は調べ尽くされていたが、敢えて過去のデータは無視した。私達がこの研究所に配属される前の時間も併せて21年間、誰も掴めなかった何かが見えようとしていたのだ。

更に長い時間を費やした時、バーキンだけがその何かに気が付いた。確かに「彼女」の中には何かが存在した。

しかし、それは「t-ウィルス計画」からは逸脱したものだった。それは全く新しい、別の構想を生み出す事になる。私達の運命を変えた「G-ウィルス計画」の始まりだった。

(記録は7年後へと続く)
 
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